1.ひい、ふう、みい



「ひい、ふう、みい…。」

「何を数えてるの。」

僕の家に遊びに来た姉に問い掛けた。
問い掛けた姉は僕の方を見てにこりと笑う。

「私があの人から愛されなくなった日を数えてるの。」

「…。」

"あの人"。
姉の口から出たその人は姉の旦那だ。
二年前に結婚した姉はその人と一緒に暮らすようになった。
…結婚すれば当然の事だけど。
だけどもこの数ヶ月、姉は旦那から暴力を受けている。
体の見えない所に出来た、青紫色の痣がそれを物語っていて、見ているだけで痛々しい。
不思議と顔は叩いていないのか、顔には痣がないから誰も姉が暴力を受けているとは疑わなかった。
だが姉の痣に気付いた母さんは、あの人と姉を離婚させようとしている。
親としては当然の事ではあるが、姉本人は離婚するつもりは全くないようだ。
母が離婚の話を持ちかけたら何時も酷く嫌がった。
愛されなくなって暴力迄振られて、どうして一緒にいたいと思うんだろう。
僕にはさっぱり分からない。

「ふふ、早く愛されたいわ。私はこんなに愛してるのに。」

楽し気に姉は笑えば暴力がなくなる日を考えているようだ。
愛は盲目とはこの事なのだろうか。
愛してる人だからこそ耐えれるのかな。
…僕にはさっぱり分からない。

「…ねぇ、あの人はもう…。」

「言わないで!…そんな言葉聞きたくない…。」

僕が言おうとした言葉の意味を理解したのか、姉が両手で自分の顔を覆う。
そしてわっと声を上げて、僕の足元で泣き崩れてしまった。
きっとあの人はもう姉を愛す事はない。
姉は再びあの人に愛される事を夢見ているけれど、きっとそれはただの幻想だ。
あの人が姉を愛する事がなければ、同時に姉があの人から愛される事を夢見続ける事だろう。

...The End

あとがき


この後あとがきを書き換えました(2022.10.10)

旦那に愛されなくなった姉の話。

ある日突然の変貌。

優しかった旦那に愛された事の有る姉は、彼が元に戻り愛される事を夢見る。


2011.02.16


修正・加筆:2020.10.10


※バトン内容はこちら※


  • ひい、ふう、みい
↑
Top