Tuesday Clear&Gin
火曜日。
未々週の始まりを感じる今日。
銀は何時ものように自宅を出て学校へ向かう最中。
そんな中、目線の先に人集りが見えた。
「…(朝から人集り…付いてないな…)」
心の中でそんな事を思いながら目線は前を向き、耳だけ人集りへと向ける。
良くその中の声を聞けば皆、誰かの名前を呼んでいるようだ。
「クリア!」
「クリア―、こっち向いて―っ!」
「クリア様ぁ!」
「…("クリア"…?…そう言えば朝ニュースで何かやってたような…)」
聞き覚えの有る名前に銀は朝のニュースの記憶を辿っていく。
日米で有名なアイドル、クリア・ベリーが今日来日するのだとテレビで見た。
思い出した"彼女"の存在に気付けば動いていた足が思わず止まり、視線も人集りに向ける。
「…(クリアって…あの"クリア・ベリー"だったのか)」
人集りが出来た原因を知れば、人集りから一人の女性が飛び出す。
赤紫色の髪に赤い瞳。
その容姿は噂の"クリア"で、テレビでしか見た事の無い彼女が銀の目の前に立つ。
それと同時に、視線がパチリと合う。
「え…、っと…。」
「丁度良い所に。アンタ、今からアタシに付き合いなさい。」
「なっ…ちょ!?」
クリアがそう言えば、突然銀の腕を掴み銀が歩んだ道を逃げる様にして走り引き返す。
有無を問わないその行為に銀が驚いた声を上げる。
だがクリアは何も言わず、銀の腕を引く。
銀の足はクリアに引っ張られた腕と共に、ただ付いて行くだけしかなかった。
* * *
「っは…はぁ。上手く撒けたかしら…。って言うか…ここ、何処なの。」
「は…ひ、人を引っ張り回してそれかよ。いきなり何なんだよ…!ってか、日本語…!」
あれから銀達は路地裏に来ていて、未だ朝だと言うのに辺りは薄暗い。
そんな中、全速力でお互い走ったのか息を切らして胸を上下に動かし荒い呼吸を繰り返す。
「何って…憂鬱なの。このツアーも気分乗らないから逃げたの。日本語は幼馴染みの日本人がいるからよ。」
「そ、そんな理由で俺を巻き込んだのかよ?」
「…それはごめんなさい。でも、誰かと居れば少し楽になれる気がしたの。」
荒くなった呼吸を整えながらそうクリアは言えば小さく溜息を吐く。
その様子に銀がクリアの頭に手を伸ばす。
そして優しく頭を撫でれば、普段から撫で慣れていないのかクリアも驚いた表情を見せる。
「なっ…何!?」
「俺、クリアの事知らなくてさ。でも朝のニュースで見たライブ映像は凄く生き生きしてたから…意外、だなと。」
「…アタシだって人間よ。こうなる時もあるわよ。活動を始めた頃はこんな風にならなかったのに。」
溜息混じりの声色でクリアが言う。
でもね…、と小さく言えばそのまま目を伏せた。
「何処へ行ってもあんな風に集られたら疲れるわよ。アタシも自由になりたい時が欲しいの。」
「…でも、ファンがいる事は幸せだと思うぞ?多分、何よりも辛いのはファンがいなくなる瞬間だろ?」
「…そうね。」
「後は…何事もチャレンジだろ。ツアー、乗る気が無くてもやって見れば?もしかしたら思わぬ出来事が有るかもな。」
ははっ、と銀は笑いながら言えばクリアに伸ばした手を離す。
それに対して銀の言葉に納得したのかクリアも又口元を緩ませて笑った。
「そう言う捉え方も有るのね。アタシ、やってみる。これはアタシからのお礼。しっかり受け取りなさい。」
先程とは違い、悪戯っぽく笑えば銀の唇に己の唇を重ねる。
だがそれは触れるだけのキス。
重なった唇は直ぐに離された。
本日二度目の突然の事に銀も呆気に取られその場で言葉を失う。
それでもクリアは"じゃあ戻るわ"、と先を進める様にそう言いその場を立ち去る。
「…ま、参ったな…こりゃ。」
苦笑を零しながらそう言えば、唇に残る感覚を複雑に思う銀だった。
勿論、この後クリアの逃走はマスコミに取り上げられ、それに載った銀は周りから色々言われたとか言われ無かったとか…。
...The End
火曜日。
未々週の始まりを感じる今日。
銀は何時ものように自宅を出て学校へ向かう最中。
そんな中、目線の先に人集りが見えた。
「…(朝から人集り…付いてないな…)」
心の中でそんな事を思いながら目線は前を向き、耳だけ人集りへと向ける。
良くその中の声を聞けば皆、誰かの名前を呼んでいるようだ。
「クリア!」
「クリア―、こっち向いて―っ!」
「クリア様ぁ!」
「…("クリア"…?…そう言えば朝ニュースで何かやってたような…)」
聞き覚えの有る名前に銀は朝のニュースの記憶を辿っていく。
日米で有名なアイドル、クリア・ベリーが今日来日するのだとテレビで見た。
思い出した"彼女"の存在に気付けば動いていた足が思わず止まり、視線も人集りに向ける。
「…(クリアって…あの"クリア・ベリー"だったのか)」
人集りが出来た原因を知れば、人集りから一人の女性が飛び出す。
赤紫色の髪に赤い瞳。
その容姿は噂の"クリア"で、テレビでしか見た事の無い彼女が銀の目の前に立つ。
それと同時に、視線がパチリと合う。
「え…、っと…。」
「丁度良い所に。アンタ、今からアタシに付き合いなさい。」
「なっ…ちょ!?」
クリアがそう言えば、突然銀の腕を掴み銀が歩んだ道を逃げる様にして走り引き返す。
有無を問わないその行為に銀が驚いた声を上げる。
だがクリアは何も言わず、銀の腕を引く。
銀の足はクリアに引っ張られた腕と共に、ただ付いて行くだけしかなかった。
* * *
「っは…はぁ。上手く撒けたかしら…。って言うか…ここ、何処なの。」
「は…ひ、人を引っ張り回してそれかよ。いきなり何なんだよ…!ってか、日本語…!」
あれから銀達は路地裏に来ていて、未だ朝だと言うのに辺りは薄暗い。
そんな中、全速力でお互い走ったのか息を切らして胸を上下に動かし荒い呼吸を繰り返す。
「何って…憂鬱なの。このツアーも気分乗らないから逃げたの。日本語は幼馴染みの日本人がいるからよ。」
「そ、そんな理由で俺を巻き込んだのかよ?」
「…それはごめんなさい。でも、誰かと居れば少し楽になれる気がしたの。」
荒くなった呼吸を整えながらそうクリアは言えば小さく溜息を吐く。
その様子に銀がクリアの頭に手を伸ばす。
そして優しく頭を撫でれば、普段から撫で慣れていないのかクリアも驚いた表情を見せる。
「なっ…何!?」
「俺、クリアの事知らなくてさ。でも朝のニュースで見たライブ映像は凄く生き生きしてたから…意外、だなと。」
「…アタシだって人間よ。こうなる時もあるわよ。活動を始めた頃はこんな風にならなかったのに。」
溜息混じりの声色でクリアが言う。
でもね…、と小さく言えばそのまま目を伏せた。
「何処へ行ってもあんな風に集られたら疲れるわよ。アタシも自由になりたい時が欲しいの。」
「…でも、ファンがいる事は幸せだと思うぞ?多分、何よりも辛いのはファンがいなくなる瞬間だろ?」
「…そうね。」
「後は…何事もチャレンジだろ。ツアー、乗る気が無くてもやって見れば?もしかしたら思わぬ出来事が有るかもな。」
ははっ、と銀は笑いながら言えばクリアに伸ばした手を離す。
それに対して銀の言葉に納得したのかクリアも又口元を緩ませて笑った。
「そう言う捉え方も有るのね。アタシ、やってみる。これはアタシからのお礼。しっかり受け取りなさい。」
先程とは違い、悪戯っぽく笑えば銀の唇に己の唇を重ねる。
だがそれは触れるだけのキス。
重なった唇は直ぐに離された。
本日二度目の突然の事に銀も呆気に取られその場で言葉を失う。
それでもクリアは"じゃあ戻るわ"、と先を進める様にそう言いその場を立ち去る。
「…ま、参ったな…こりゃ。」
苦笑を零しながらそう言えば、唇に残る感覚を複雑に思う銀だった。
勿論、この後クリアの逃走はマスコミに取り上げられ、それに載った銀は周りから色々言われたとか言われ無かったとか…。
...The End
あとがき
この後あとがきを書き換えました(2022.10.10)
クリアが日本に来日したばかりで司に一目惚れする前の話。
2010.02.12
再UP:2011.03.09
修正・加筆:2020.10.10