何だか気分が悪い。
腹の周りを何かぐるぐる取り巻くような、そんな感覚。
空を飛ぶ気にもなれなくて当てもなく世界を歩き続けた。
ピチョン、と頭の上に冷たい物が落ちてくる。
空を見上げればそれは雨で、どうやら雨林迄来てしまったらしい。
屋根の下に急いで入る気にもなれず、今のケープなら屋根の下に間に合うだろう。
そんな事をぼんやりと考えていたら頭上に影が差す。
あれ…屋根はまだ先の筈。
上を見上げればそこには慌てた様子のシリウスがいた。
手には傘を持っている。
雨を遮ったのはこれのようだ。

「何してるの!?雨に濡れたら危ないの知ってるよね!?」

私の手を握り、減った分のエナジーが回復していく。
そんなに減らしたつもりはないけど、シリウスが慌てる位には減っていたのだろうか。

「ご、ごめん…。」

「素直だね。何だか君らしくないけど、どうしたの。」

「別に何も…。」

私の手を引いて、屋根の下へと連れていけば傘を閉じて背中に抱える。
そしてパッとシリウスが両手を開く。
何で今のタイミングでハグ…?

「急に何…?」

「元気がないみたいだからハグを、と思って。ハグしたら少しは落ち着くって本にも書いてたし。」

「何だその本は。そんなの私は聞いた事がないぞ。」

「ほら。」

何時までも両手を広げたままのシリウスが私に催促する。
ハグでどうにかなるような気はしないが、きっと行かないとシリウスも腕を下ろしそうにない。
観念した私はシリウスの元へと行けばギュッと抱き締められた。
私より少し大きいだけなのに、全てを包み込んで私の中にいる何かを溶かしてしまうような、不思議な感覚だ。

「どう?」

私の背中で手を組みながらしっかりホールドしたまま顔を覗き込む。
あの、その前にいい加減離して欲しいんだが…?

「どうって…まぁ、少しはマシになったかな…?」

「良かった。」

本当はこの感情に何て表現したらわからなくて、適当に言っただけだった。
でもそれを受け止めてくれたのかシリウスは嬉しそうに言えばパッと手を離す。
だが直ぐにシリウスが私の手を取り繋ぐ。

「…?あの?」

「良いところに連れてってあげる。」

ばさり、と背中に直した傘を取り出し開く。
冷たい雨はもう頭の上には落ちてこない。

「ほら、行くよ。」

「あ、ああ…。」

状況を把握出来ていない私の手を引いたまま空へと飛ぶ。
私より高く飛べるシリウスは上手く木々を避けて飛び、あっという間に目的地に着いたようだった。

「もう着いたのか。」

「まぁ、あの場所からは近かったし。」

ふわりと着地すれば、私が濡れないように手を引き傘の中へと入れてくれる。
そこまでしなくても良いのに。
そう思ったけれど、私は大人しくシリウスの誘導に従い傘の中に入った。

「空を見上げて見て?」

「…空?」

言われたままに空を見上げれば、シリウスの持つ傘が移動し視界が明るくなる。
するとそこには大きな虹が出ていて、思わずわぁ…と声を漏らす。

「この時間になったら出るんだって。本で前に読んだんだ。」

「本当に本が好き何だな。」

「うん。楽しいよ、本は。ボクの知らないことを教えてくれる。」

キラキラと目を輝かせながら、シリウスが虹を見上げて言う。
ああ、その目は本当に本が好きなんだと私は実感させられる。
きっとこの虹の事も私の為に調べてくれたんだと思うと少し恥ずかしい。
それは少し考えが飛躍し過ぎだろうか。

「…有り難う、シリウス。」

「喜んでくれて良かった。…あのね、スピカ。ボクは何があっても君の味方だからね?」

「あ、ああ…。」

先程迄輝いていた目は消え、真剣に、でも何処か不安そうな目で私を見れば繋ぐ手が少し震えている。
急にどうしたんだろう。
シリウスの言葉の意味を理解出来なかった私は言葉に詰まらせた返事を返す。
何時か、私がその言葉の意味を理解する時が来るのだろうか。
去った筈のもやもやが、再び現れた気がした。

...The End

あとがき


この後あとがきを書き換えました(2022.10.10)

シリウスはスピカに対して世話焼きだよ~って話。

後何と無く暗闇が差すスピカさんを書きたかった。

それとね、虹の話この間似たようなの書いたの忘れててここまで書いてやっと気付きました(爆笑)


2020.01.17


修正・加筆:2020.10.10

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