if...



「俺が神威を好きだって?そんなワケねぇよ。」

「…そう?昴、時々神威先生の事、恋してる様な目で見てるでしょ。」

「っ、違う…!」

今日の昼休みにクラスメイトである杳に言われたのを思い出す。
咄嗟に違うと答えたものの、言葉はスムーズに出てこず詰まらせながら返事を返したのを覚えている。
俺が神威の事を好き?
寧ろ心の底から嫌いな奴を恋愛感情に抱く方がどうかしてるって。

「…嫌よ嫌よも好きのうち、って言うでしょ?」

俺の返答に楽しそうに笑ってそう言った杳の顔が忘れられねぇ。
俺はバスルームの水の蛇口を捻り、勢い良く出た水を浴びる。
冷たい水にぶる、と身体を震わせたが今はどうでも良い。
忘れなければ。
彼女に言われた台詞を、忘れないと今の自分が消えてしまいそうだ。

「…(俺は…好き、じゃねぇ)」

目を閉じて、小さく首を振る。
何時だって自分は棗の事を一番に考えて、棗を自分のものにしようとして来た。
それなのに、今日の杳の言葉。
有り得ない、そんな事。
そんな事はあってはならないのだ。
でも…偶に見る棗に見せるあの笑顔が…俺は…。
突然心臓が脈打つ。
それ以上先の事を考えたくなくて、シャワーの蛇口に手を伸ばして更に捻る。
体の奥底からじわじわと込み上げて来る感情。

「…(絶対、違う、んだ…)」

込み上げて来る感情に支配されそうで、じわりと目に涙が滲む。
胸元に手を当て、目を強く閉じて力なく再び首を振る。
静かなバスルームにシャワーの音だけが聞こえた。

...The End

あとがき


この後あとがきを書き換えました(2022.10.10)

文章が酷過ぎたので加筆修正…。

一次創作の本編は殆ど完結しなかったけれど、10年以上前の作品…。

本来本編では主人公に恋する幼馴染が主人公のライバルと手を組み、主人公カップルの恋路の邪魔をする話。

その邪魔する途中で、徐々に幼馴染が主人公の恋人に恋をするお話。

本編では絶対にない話なのだけど、こう本編にない道筋を書くのは随分楽しかった模様。

まぁ、その気持ちは年を重ねた今でも大変わかるよ(…)


2009.08.25


修正・加筆:2020.10.10

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