翌朝。
窓から差す日差しが、暖かい。
もう少しこのまま布団の中に眠ってたい気分だ。



act*8



「紅、起きなよ。朝だよ。」

俺の耳に届くは碧の声。
愛しい人のその声を聞いて居たくて俺は寝た振り。
別に寝た振りしなくたって碧の声は聞けるんだけど今はこうしたかった。

「ほら、起きないと遅刻する。」

とうとう布団を捲られ暖かさが抜けて行く。
って待って俺昨日の格好のまま…!

「…あれ。」

慌てて飛び起きて自分の身体を見れば何時ものパジャマを着て居る俺が居る。
昨日は碧との繋がりを持ち、服も制服のままだった…筈。
何時の間に着替えたんだろう。
着替えた記憶が無いんだけど…。

「お早う。…どうした?」

じっ、とパジャマを見詰める俺に碧が首を傾げる。

「俺、いつの間にパジャマに着替えたっけ、って思って。」

「あぁ、それなら昨日俺が着替えさせた。」

「え…。」

「何、問題でも有るか?」

「そう言う訳じゃないけど…。」

何だか有り難い様な、恥ずかしい様な。
や、ここは感謝すべき何だろうけど。

「あ…有り難う…。」

「どう致しまして。…ほら、朝食出来てるから。」

「うん。」

碧は満足そうに笑えば碧は俺を朝食へと誘う。
台所からじわりと匂うトーストの匂いに腹が刺激されて空腹感を感じる。
あー…お腹空いたな。

* * *

「お早うー。」

ガヤガヤと賑わう朝の教室。
授業が始まる迄は休憩時間だから皆思い思いの事をして居て、英介もその中の一人だった。
と言っても、机に突っ伏せて寝てただけなんだけど。
俺の挨拶と共に伏せていた顔を英介は上げれば俺と碧を見ればニヤニヤと笑う。

「お早う。紅、碧。」

「な…何ニヤニヤ笑ってるんだよっ。」

「いや、昨日の渡したあれは使ったのかなって。」

「なっ…な!?」

朝一番にダイレクトにそんな事聞かれるとは思って無くて、思わず変な声が出た。
普段は絶対に出ない、高い声。
すると英介の頭上に、碧の手が降りて英介を机に無理矢理伏せさせる様に押さえる。
笑いながら碧は答えてるけど良く見れば笑ってるのは口元だけで目は笑ってない。
寧ろ普段の笑みより黒い何かが滲み出てて怖かった。

「どうなん…げふ。」

「勿論使わせて頂きましたが?」

「俺、これでも俳優なのにこんな扱いって…。」

「ん?知ってるけど今はそれは関係無いだろ?」

ふふ、と碧は黒い笑みを浮かべたまま英介の頭を手で押さえたまま言う。
…碧ってこんな人だったっけ…?

「ってかいい加減手を離せっての…!」

がば、と勢い良く英介は起き上がれば碧の手を退かす。
未だ、目は笑ってない。

「ん?…まぁ、昨日の件は不本意ながらも英介に助けられたから感謝はしてるけど。」

「…不本意ってどう言う事ですか、碧さん。」

その後は何時も通りの調子で碧と英介のやり取りが続いた。
だけどその時、俺の胸元がもやもやとする。
別に何もしてないし、今朝だって体調も悪くなくて寧ろ良好だ。
それなのに何なんだろう、このもやもやは…。
今迄感じた事のないもやもやに俺は一人戸惑った…。

* * *

「碧ー、そっち行ったぞー!」

「分かってる!」

パン、とテニスボールをラケットで打つ音が聞こえる。
今は体育の授業中で俺の目の前のコートにはクラスメートとダブルスをする碧が居た。
俺はと言うもののさっきのもやもやの事を考えてたら出遅れちゃって英介とコートの順番待ち。

「どうしたんだよ、さっきから黙って。何か有ったのか?」

よっ、と小さく声を漏らしてジャージ姿の英介が俺の横に座る。

「ううん、何でも…「っしゃ!碧勝ったぞー!」

「ふぅ…。何とか、な。」

何でもない、と英介に返答しようとした途端聞こえるはクラスメートの声。
どうやらコートでの試合が終わったのか碧と組んでたクラスメートが声を上げたらしい。
勝てた事が嬉しかったのか碧に飛び付いて居る。

「…あれ。」

その途端浮上するもやもや。
それは先程感じたのと全く一緒でじわじわと胸を覆う様に大きさを増す。
もやもやの拡大と共にクラスメートに対して碧から離れて、と思って居る自分も居た。
今迄こんな事思わなかったのにどうして…?

「どうした?」

「え…。あ、実は…「神崎 紅ー、大堂ー次お前等コート入れよー。」

「あ、はい。今入ります。ほら、ラケット。」

「有り難う。」

今度は教師に声を遮られれば俺と英介をコートへと呼ぶ。
足元に置いて有った二人分のラケットを英介は拾い上げれば内一つを俺に渡す。
英介からラケットを受け取れば俺はコートへと向かう。
この後俺は試合をする事になるけど、試合中碧の視線が睨む様に英介を見ていた何て気付きもしなかった。

* * *

「紅、ちょっと。」

「ん?何。」

体育の授業も終わり、制服へと着替えた休憩時間。
丁度制服へと着替え終わった俺に碧が声を掛ける。
すると突然碧に腕を引っ張られ外へと連れ出されれば、場所はこの間英介に連れ出された裏庭だった。
ちょ…何々!?

「あ、碧…?どうしたんだ?」

「ちょっとだけ悪いが大人しくして。」

「っ…!?」

握られたままの手を碧は自分の方へと引けば俺を抱き締める。
大人しくしろ、何て言われても突然の事だったから少し声を上げてしまった。
顔が熱い。
碧は平然とこんな事するのに未だに動揺する俺は未々なのかな。

「…顔、真っ赤。…あーあ、俺紅と繋がってからますます貪欲になってる。」

「な、何の話…?」

俺の顔を覗き込みながら碧はクスクスと笑う。
でもそれに続いた言葉が引っ掛かって俺は首を傾げる。
それって、どう言う事…?

「よりによって英介だからな、相手が。紅、分かる?俺、紅が英介と何気無い話してただけなのに英介に嫉妬、した。」

「え…?」

どう思う?、って罰が悪そうに言いながら苦笑する碧。

「普段から俺達一緒なのに、英介と話す紅が嫌でさっきの授業の時も凄い嫉妬した。」

ぎゅ、っと俺を抱き締める碧の腕の力が強くなる。
碧が嫉妬したなら、俺もあの時嫉妬した。
今朝の時は何も意識は無かったけど俺も知らない内に英介と話す碧に嫉妬したんだと思う。
二回目は碧の理由を聞いてあのもやもやの正体が何なのか確信出来る。
お互いが嫉妬するのか可笑しくて思わず笑ってしまった。

「ふふ。」

「何笑ってるんだよ?」

突然笑いだした俺に碧が不貞腐れた様な声色で俺の顔を覗き込む。
何だか今日の碧は可愛らしいな。
言ったら怒られるから言わないけど。

「ううん、何でもない。…でも、俺も貪欲なのかも。俺も、英介やクラスメートに嫉妬してたから…。」

改めて目を見て伝えるのが恥ずかしくて碧から目を逸らして言う。
そうすれば俺を抱き締める腕が又強くなってちら、と碧の方を見れば嬉しそうに笑ってる。

「凄い嬉しい。…紅、本当に俺を選んで有り難う。」

俺も、ってその後に答えたかったけどその途端碧からキスをされて居て何も言えなかった。
…愛しい人。
俺達の恋は人に言えないし、未々障害は有るけれど、今日も俺達は幸せです。
ずっとずっと、これからも愛しいこの人と一緒に居れます様に…。

Butterfly
(俺を選んでくれて有り難う)

...The End

あとがき


これにて紅と碧連載終了です。

纏めた後書きは別でするとして…。

今回は英介が何だか可哀想な展開に(笑)

碧も碧で黒いのが降臨してるし(笑)

いや、書く側は凄く楽しかったんですけど(笑/…)


でも何だか締めは甘いなー…。

あ、糖度じゃなくて小説の締めです。

何だか自分が納得する様な終わり方じゃないのでもしかしたら近々修正すると思います。

うむむ。


本当は嫉妬は入れるつもりは無かったんですがそれだと凄く中身が浅くなるので急遽入れました。

そしたら滅茶苦茶では無いですが何時もよりは長くなりました(笑)

分割すると中途半端だし最終話もあったのでそのままいっちゃいましたけどね!(…)


2012.02.17

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